なぜコロナ禍でも物件価格が上がるのか
コロナ禍により下がるかのように思えた都心のマンション価格が、むしろ上昇したことを皆さんはご存知でしょうか。
リーマンショック時にマンション価格や地価が下がった経験から、リーマンショックのような経済危機が起こると、マンション価格が下がりやすいイメージをお持ちの方が多いかと思いますが、実は都心のマンション価格は下がっておらず、むしろ上昇しているのです。
しかし、なぜマンション価格が上昇しているか皆さん気になりませんか?
そこで本日は、「なぜコロナ禍でも都心のマンション価格が上昇しているのか」を分かりやすくご説明したいと思います!
【マンション価格が下がる原因】
都心のマンション価格が上昇している理由を説明する前に、そもそもマンション価格が下がる時に、不動産市場で何が起きているのかを簡単に説明致します。
マンション価格下落の主な原因は、下記の3点にまとめることが出来ます。
➀マンションの買い手がいない
➁マンションの売り手が価格を下げる
➂供給バランスが崩れる
買い手がいなくなる背景には、マンション価格が高いため購入が出来ない、利回りが悪く買う気になれない等様々な原因が存在しますが、買い手がいなくなると、売り手はそのような中で少しでも早く物件が売れるように、様々な手段を考えなければいけません。
その手段の1つとして、売り手は価格を下げることで少しでも早く売れるように策をとることが多いですが、この売り急ぎが多発することにより「将来的に物件価格が下がる」と考える人が増えてくると、今以上に保有資産の価値が下がることを避けるため、更にマンションを売る人が増え、売り手と買い手の供給バランスが崩れます。
このバランスが崩れた時に、不動産市場が既に供給過剰であれば、マンション価格の値下げ競争になってしまい、どんどんマンション価格が下がっていきます。
経済危機が起こった時に、3つ全てが同時に起こるとは限りませんが、バブル崩壊・リーマンショック時には3つが同時に起こり、新築・中古も共に大きく下落しました。
出典元:DIAMOND ONLINE「コロナ禍とマンション市場」
【マンション価格が上がった理由】
バブル崩壊やリーマンショック時には、新築・中古も共に価格が下落しましたが、マンション価格が上昇して理由を説明したいと思います。
- コロナ禍でも買い手はいなくならない
最初の緊急事態が発出された昨年4月には、新規住戸数(前月には市場に出ていなかったが、当月に発生した売り住戸の数)と消滅住戸数(当月には売り住戸として存在したが、翌月には成約などで消えた住戸)が共に減少しましたが、6月以降には回復しています(図1参照)。
特に消滅住戸数の回復は、新規住戸数の回復より早く、市場の中でマンションを買いたい人は、売りたい人を上回る状況になっていたことがわかります。このような回復の動きにおいては、エリアや価格帯などで偏った動きは生じておらず、実需(不動産を自分で使用すること)も投資用も同時に回復しています。
➁売り手は価格を下げる必要がない
マンションを買いたい人が減らず、売りたい人よりも多い場合、マンション価格は下がらずむしろ上昇していきます。これは、需要・供給を考えると当然のことなのですが、コロナ禍により多くの人が「巣ごもり」の体験をしたことがマンションを買いたい人が増えた大きな原因の1つです。
テレワークやおうち時間の増加など、新しい生活様式に適応していく人も多く、その中で住まいに対する価値や役割を見直し、マンションの購入を希望する人が増えたのだと考えられます。
また、マンションを購入する人だけではなく、賃貸に住んでいる人々にとっても住まいは授業を受けたり、仕事をしたり、場合によっては運動をする場になるなど住まいに対する価値観に変化があり、賃貸需要も高まっているため、不動産投資を始めようとする方も増えてきています。
このような様々な背景からマンションを購入したい人が増え、マンション価格を下げる必要がなく、むしろ上昇する1つの要因となっています。
➂コロナ禍で売り手市場が継続していた
図2のグラフから分かるように、中古マンションの在庫住戸数が昨年6月より減少していますが、減少している理由はコロナ禍前と比べ買いたい人が減っていないのに、売りたい人が減ったことが原因です。マンションを所有している人は、コロナ禍で価格が下がる可能性が考えられた中で、バブル崩壊やリーマンショックとは異なり「今以上に下がらないように売っておこう」と売り急ぐ人よりも、売ることをためらう動きをとった人の方が多かったことが分かります。不動産投資をしている人の中には、所有している資産を売却せずに、むしろ買い進める人も多くいるようです。
以上3点がコロナ禍でもマンション価格が上昇している理由となります。
経済危機が起こると、心理的に「物の価値が下がる」と考えてしまうことが多いですが、必ずしもそういったことが起こるわけではありません。
状況に応じて、売ったり買ったりできることが、不動産投資のいいところではないでしょうか。